わたしはナユちゃん!
第壱拾九話「残酷な天使のテーゼ」
祐一「なんで・・・こうなったんだっけ・・・」
俺は何も無い荒野のド真中にポツンと立っていた。
いや、荒野という表現は正しくないかもしれない。
今俺が立っている場所は、間違い無く商店街だった場所だ。
それが今では所々に大きなクレーターがあるダダっ広い荒野になっていた。
祐一「う〜ん・・・」
少し記憶を整理してみよう。
確か俺は、名雪とデートの待ち合わせをして商店街に向かっていたはずだ。
そこで・・・
北川「え、エビの脱皮! エビの脱皮脱皮脱皮!!」
祐一「失せろこの変態!!」
突如として現れた馬鹿を竜破斬で吹き飛ばす。
え〜っと・・・なんだっけか。
あっ! そうだそうだ。
商店街に向かっていたら・・・
北川「相沢・・・お前が好きだ。お前が欲しい!!」
祐一「消えろって言ってんだろこのボケェッ!!」
復活してきた生ゴミを今度は重破斬で消滅させる。
全てを生出せし者を使っての攻撃。流石にこれでもう出て来ないだろう。
まったく、人が大事なことを思い出そうとしてるってのに・・・
それにいつからあいつはホモになった?
確か少し前までは香里一筋だったハズだ。
・・・筆者の奴、またやりやがったな!?
いつかシメてやるぞ筆者。
っと、話しが脱線したな・・・
ん〜・・・あれ? 思い出したけどまた忘れちまったよ。
せっかく思い出したってのに。
う〜ん・・・んぐぐぐぐ・・・
あ〜ちくしょう! 思い出せない。
こういう時ってむしょうに腹が立つんだよなぁ・・・
祐一「ま、そのうち思い出すだろ・・・」
俺は無理に思い出すことを止め、少し歩いてみることにした。
何かのキッカケでフっと思い出すことはよくある事だしな。
祐一「しっかし・・・見事に何も無いなぁ・・・」
何度も独り言を呟きたくなる程に、目の前には何も無い荒野が広がっていた。
たまに何かの残骸を見かける程度である。
粉々になったギャオスの肉片、ASS-1、攻撃空母プロメテウス、ピッコロさんの腕
様々な物が落ちていた。
ん? ASS-1やプロメテウスは大きいじゃないかって?
直径が軽く1km以上あるクレーターの中に沈んでるんじゃわからねぇって。
しばらく歩いてみたが、思い出すキッカケになるような物は何一つ無かった。
祐一「せめて人が居ればなぁ・・・」
そう呟いてみても、あたりに人の気配はまったくしない。
まるで人類が全て滅んで、自分1人だけが生き残ったかのような錯覚に陥りそうになる。
が、北川が生きていたので、その考えは直ぐに消え去った。
とにかく、どうしてこうなったのか思い出せない以上、誰か人を見つけて事情を訊くしかない。
その為に俺は、諦めずに探しまわることにした。
そしてしばらく歩いていると、倒れている人影を見つけた。
祐一「おい! 大丈夫か!? しっかりしろ! って、名雪じゃないか!?」
急いで駆け寄って声をかけてみると、それは名雪だった。
祐一「おい! 名雪! しっかりしろ!」
揺さぶって声をかけてみると、名雪はゆっくり目を開けた。
名雪「あ、祐一・・・ ごめ・・・んね・・・ わたし、ダメ・・・だったよ・・・ まけちゃった・・・」
弱々しく口を開け、力無く言葉を吐き出す名雪。
俺には一体何があったか解らなかったが、名雪の命が危険だということは解った。
祐一「名雪! しっかりしろ! 死ぬな! 死ぬんじゃない!」
涙が出るのを必死に堪えつつ名雪に呼びかける。
名雪「ゆう・・いち・・・ ごめん・・・ね わたし・・・つかれ、ちゃったよ・・・ すこし・・・眠っても・・・いい?」
祐一「駄目だっ!! 寝ちゃ駄目だ!! 名雪、俺を・・・俺を1人にしないでくれ!!」
もう限界だった。堪えていた涙は溢れ出し、頬を伝って顎に辿り着き、雫となって名雪の顔を濡らした。
北川「吉六会奥義・・・奈良づく・・・しぃっ!?」
再度復活してきた変態を、無言で特異点に叩き落す。
名雪「ゆうい・・・ち ごめんね・・・」
その言葉が最後になった。名雪の瞳は閉じられ、もう2度と開くことはない。
祐一「な、名雪・・・ なゆきぃぃぃぃぃぃっ!!!」
俺は力いっぱい叫んだ。もはや涙は止めど無く溢れ出し、それを堪えることも出来なかった。
大切な人を失った・・・本当に大切な人を。
祐一「誰だ!? どこのどいつが名雪をやった!? 殺す・・・ぶっ殺す・・・」
名雪を失った俺の心は、名雪を殺った奴への怒りと憎しみで満ちていた。
と・・・その瞬間・・・
?「はいカットー!」
どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
祐一「へっ?」
俺は思わず我を忘れ、素っ頓狂な声を上げて固まってしまった。
?「いや〜、ごめんね〜。驚いた? 実はね、コレなんだよコレ」
どこから出てきたのか、タキシードにデカイ真っ赤な蝶ネクタイと、
今時芸人も着ないような格好をした男が、手にプラカードを持って登場した。
そのプラカードにはこんな文字が書かれていた。
『素人ドッキリ』
その文字を見た瞬間、俺の脳は思考を停止してしまった。
?「あれ〜? どうしたのかな? お〜い。君〜?」
思考が止まり、固まっている俺の顔の前で、男が手を振っている。
が、そんなものも今の俺の脳には情報として届いていなかった。
?「う〜ん・・・ま、いいや! 素人ドッキリ、大成功!!」
男が俺の手を持ち上げて高らかに宣言した。
?「はい。お嬢ちゃんももういいよ〜」
名雪「は〜い。どうでした〜?」
?「いや〜、名演技だったよ。これなら女優にだってなれるよ」
名雪「え〜、そんなの無理ですよ〜」
?「そんなことないって。ほら、彼氏本気で泣いてたじゃん」
今だに脳が停止している俺の横で、何やら名雪と男が喋っている。
少しその男と話した後、名雪は俺に走って駆け寄ってきた。
名雪「祐一〜♪ 私、演技上手だって誉められたよ〜♪ 祐一?」
嬉しそうに話す名雪だったが、俺が微動だにしないのを気づいたようだ。
名雪「祐一? そんなに驚いたの? ゴメンネ♪」
イタズラっぽく謝った名雪の声と同時に、唇に暖かい感触がした。
どうやらキスをしたようで、そのショックもあってか、俺の脳は思考を再開した。
祐一「はっ!? 名雪? お前、死んだんじゃ?」
名雪「祐一〜、何言ってるんだよ〜。これドッキリだよ〜?」
ドッキリ? その単語が俺の脳内を駆け巡る。
祐一「えっと、ちょっと待ってくれ。これはドッキリで、名雪が死んだのは嘘ってことか?」
思考を回復したとはいえ、混乱している頭を必死に整理してまとめる。
名雪「当然だよ〜。私が、祐一をおいて死ぬわけないよ♪」
可愛く微笑みながら嬉しいことを言ってくれる名雪。
よし、名雪は許そう。
だが・・・他の奴らは死刑だ・・・
その後・・・荒野にTVクルーの泣き叫ぶ声と、祐一の怒り狂う一撃が響き渡った・・・
つづく
後書き
お久しぶりのナユちゃんでっす。
今回から第2部に入ります〜。
名雪「・・・これって何ヶ月ぶり?」
・・・4ヶ月ぶりくらいかな・・・
名雪「最低・・・だね」
あははは・・・ごめん(平謝り
名雪「次回は早めにね・・・」
・・・また次回で会いましょう〜♪
名雪「・・・流したね・・・死になさい」
やっぱこうなるのかぁぁぁぁぁっ!?