あの夜から1ヶ月が過ぎ、ついに俺と名雪は育った街、スノゥタウンを旅立った。
旅に出る為に、ここ1ヶ月は稼ぎまくった。1週間でガンタワー50体なんていうとんでもない数を倒し、
ハンターオフィスの人間を仰天させたりなど、とにかくガムシャラに稼ぎまくった。

おかげで当面の資金には困らないだろう。
その代わり、主砲は買い換えなきゃいけないくらい消耗したが・・・

名雪「ねえ祐一、旅に出たのはいいけど、どこに行くの?」

街を出て、しばらく戦車を走らせていると、
名雪が頭に大きな疑問符を浮かべ問いかけてくる。
俺は、ふむ、そうだな・・・と、少し考えると、

祐一「まずは主砲を買い換えなきゃな。こいつ(135mmキャノン)はもう限界だ」

外見からでは判らないが、砲身の内部が歪み、砲弾の命中精度が各段に落ちたのだ。
こうなったらもう修理は効かず、砲身自体を交換するしかない。
幸い135mmキャノン程度なら、ありふれた大砲なので、ある程度の規模の街なら扱ってるパーツ屋もけっこうある。

名雪「じゃあリバーピアで替えようよ♪」

そらきた。
絶対言うとは思っていたが、ここまで行動が判り易いやつも珍しい。
俺はやれやれといった感じでため息をつく。

名雪「祐一、今失礼なこと考えたでしょ」

こういう時の名雪は妙に鋭い。
いつもこうだといいんだがな・・・

祐一「そんなことないぞ。いつもこれだけ鋭ければなぁ。って思っただけだ」

名雪「やっぱり失礼なこと考えてる〜」

その後、俺は名雪にリバーピアの百花屋で、イチゴサンデーを2杯おごることになった。


                はがね
メタルマックスカノン 〜鋼鉄の絆〜


第2回「旅立ち」

リバーピアに到着すると、俺達はハンター専用の駐車ドックへ向かった。
先人達の活躍によりハンターはかなり優遇されていて、ほとんどの街に
戦車の整備、修理、改造などが行える、設備が整った駐車ドックが用意されている。
しかもそのドック付近には、ハンター専用のホテルまである。
ハンターライセンスさえ見せれば、格安の料金で宿泊可能だ。

係員「ハンターライセンスと、戦車名をお願いします」

祐一「相沢祐一。戦車は『オーディーン』だ」

受付の係員にライセンスを提示し、戦車を中に入れる。

祐一「んじゃ、俺はパーツ屋に行ってくる。整備は任せるぞ」

名雪「うんっ、任されたよ〜」

戦車をドックに停め、一旦名雪と別れる。
名雪は砲手兼、オーディーンの専属メカニックだ。
見かけによらず名雪はメカニックの腕も良く、オーディーンのことなら隅から隅まで知り尽くしている。
オーディーンはあいつに任せておけばいい。

祐一「さて、どうするかな・・・」

レンタル屋で買ったパーツを運ぶ用に車を借り、俺は大砲を物色していた。
今までよりもう少し強い大砲を買おうかとも思ったが、135mmでも十分か。
と思い、135mmライフル砲を買った。
以前の71口径より多少落ちる62口径を発射する大砲だが、速射性に優れる為、ライフル砲を選んだ。
まあ、口径を変えたことによって、今搭載している砲弾が全部使えなくなったが、
それは仕方ないだろう。

俺はその他必要な補給物資、バーナードラゴンの燃料や、マニアックシェフの炸裂弾、
名雪に頼まれていた修理用の予備パーツ、食料などを買いこんで、ドックに戻った。

祐一「帰ったぞ〜!」

ドックに戻ると、ふとした出来心から、家に帰った夫を演じてみる。

名雪「お帰りなさい♪ お風呂にする? ご飯にする?」

名雪も俺のやりたいことがわかったのだろう。
ノリノリで反応した。

祐一「いや! まずはお前だ〜っ!」

名雪「きゃ〜っ♪」

機械油まみれの作業服を着ていた名雪を、その場に押し倒す。
名雪は悲鳴を上げてはいるが、嬉しそうな悲鳴だ。

祐一「名雪・・・」

名雪「祐一・・・」

床に倒れたまま見詰め合う。

?「ゴホンゴホンッ!」

少し離れた駐車スペースから、咳き込む声が聞えた。
我に帰って周りを見ると、同業者達がこっちを睨んでいた。
ある者は自分の戦車を殴りつけ、ある者はわけのわからない叫び声を上げていた。
「ちくしょう!」という声もそこらから聞えてくる。

祐一「あ、あははは」

乾いた笑い声が辺りに響く。
押し倒された名雪は、まるでトマトのように真っ赤になっていた。

名雪「も〜、すっごく恥ずかしかったんだからね〜」

名雪がもぐもぐと、イチゴサンデーを頬張りながら抗議してくる。
因みに既に2杯目だ。

あの後、俺達は逃げるようにドックを飛出し、百花屋に来ていた。

祐一「悪かったって。好きなだけイチゴサンデーおごってやるから許してくれよ」

俺がそう言うと名雪は、「うん、いいよ。それで許してあげるよ」と言って、
合計4杯のイチゴサンデーを平らげて店を後にした。

祐一「さて、ドックに戻って作業の続きをしないとな」

逃げるようにドックを飛出してきたきた為、主砲の交換が済んでいないのだ。
あと砲弾の交換もしなければいけない。

名雪「うん。ふぁいと、だよ♪」

励ましてくれる名雪の頭を、クシャっとちょっと乱暴に撫で、ドックに戻る。
俺と名雪は作業服に着替え、主砲の交換作業を先にすることにした。

名雪「祐一、なんで滑腔砲からライフル砲に変えたの?」

新品の135mmライフル砲を主砲の位置に固定する作業をしながら、
クレーンを使ってライフル砲を支えている俺に訊いてくる。

祐一「ああ、それはな。バイオニック系や、サイバネティック系と戦う時、多少有利になるからだ」

名雪「え? なんで?」

本当にわからないといった感じで、名雪が問い返してくる。
こいつは・・・射撃の腕や、メカニックの腕は良いくせに、ハンターの知識となると
からきしダメだ。

祐一「あいつらの中には、強力な再生能力を持ったやつもいっぱいいるだろ。
そいつらに再生する暇を与えない為に、速射できる大砲が必要なんだよ」

名雪はそれを聞くと、「へ〜、そうなんだ〜」と仕切りにうんうん頷いてる。
ホントにわかってんのかこいつ? と疑わずにはいられない。

俺達はそんなやり取りを繰り返しながらも作業を終え、リバーピアのアンターオフィスへ赴いた。
モンスターを倒した賞金をもらう為と、この辺りのWANTEDモンスターの情報と、
何かしらハンターへの依頼がないか、調べる為だ。

ハンターは何もモンスターを倒すだけが仕事ではない。
一般人から仕事の依頼を受けることも多い。
だが、そんな仕事のほとんどは、物を運ぶ際の護衛だが。

俺はコンピューターをいじり、この付近のWANTEDモンスターの情報を検索する。
すると数件がヒットし、リストが表示された。

『デストロイア・バス 賞金100,000G』
『アーマークロコダイル 賞金220,000G』
『ナマズンゴ 賞金250,000G』
『Ω-シャーク 賞金1,000,000G』
『オルガナイザー 賞金1,500,000G』

流石河口の街。水の中に生息するモンスターばかりだ。
しかし、思いっきりCランク以下のモンスターと、Aランク以上のモンスターに分けられたな・・・
100万以上のAランクモンスターは、まだ俺達には無理だ。
返り討ちにされるのがオチだ。

となると、Dランクのモンスターだが・・・
なんだこのネーミングセンスのかけらも感じられない名前は。
俺の目にとまったのは、賞金額25万のナマズンゴだった。

俺はナマズンゴの詳細画面を開く。
しかし、俺はそれを見て吹き出してしまった。
ハンターオフィスに響く俺の笑い声。

名雪「ちょっ、祐一どうしたの? 急に笑い出したりなんかして」

俺がいきなり笑い出したので、名雪が血相をかえて駆け寄ってくる。

祐一「ひぃ、ひぃ・・・これ、見てみろよ。なんだよこいつ〜! あっはっはっはっはっ!」

名雪「え? これ? ・・・プッ、あははははっ! な、なにこれ〜っ! あはははっ!」

俺達が見たものは・・・
まるでギャグ漫画にでも出てきそうなほどにデフォルメされたナマズの姿だった。
飛び出た目玉、膨れ上がったタラコのような口、オタマジャクシなような尾ひれに、
取って付けられたような小さな腹ひれ。
名は体を表すと言うが、ここまで馬鹿みたいなモンスターは初めてだった。
しかもこんな姿と名前でCランクのモンスターだというのも更なる笑いを誘発する。

俺と名雪は、周りの視線に気付くことなく、しばらく爆笑し続けた。

名雪「うう、祐一。周りの視線が恥ずかしいよ」

落ちついてみれば、周りからの視線が痛いだけだった。
時折ヒソヒソ話をする声も聞える。

祐一「・・・名雪、コイツに俺達に恥じをかかせてくれたお礼をしよう」

俺も目立つのは好きじゃない。
しかもこんな目立ち方など言語道断だ。
俺は仕返しにコイツを倒すことに決めた。
傍から見れば、ただの逆恨みなのだが・・・

俺と名雪は、次の日から狩りに行くことに決め、この日はホテルに泊まった。
ナマズンゴは、この街の川を遡ったところにある、湖に生息しているらしい。


続く・・・

 



後書き

・・・・・・えっと、第2回です。
名雪「シリアスじゃなかったの? しかも、メインはでびるさまなーなんじゃ」
んな毎回毎回シリアスにしてたら、Kanonじゃなくなっちゃうだろ。
ほのぼのを交えつつ、肝心なとこはシリアスなのさ。
名雪「それはわかったよ。2つ目は?」
・・・ごめんなさい。
他の方の書いた、メタルマックスのSSに触発されて、こっちを書きたくなりました。
そのメタルマックスのSSは、Kanonのクロスじゃなくて、
純粋にメタルマックスのSSなんだけどね。
名雪「ふ〜ん・・・」
ふ〜ん・・・って、それだけかい!
名雪「だって馬鹿な筆者にこれ以上言ったって無だじゃん」
ぐふあっ!
名雪「あ、血ぃ吹いて倒れちゃった・・・それじゃまたね〜」