ドゴォッ!!

空気を切裂く轟音が轟き、135mmキャノンの砲弾が、ATサイクロプスの装甲を貫く。
装甲に大穴を空けられたATサイクロプスは、爆発炎上し、ただの屑鉄と化した。

祐一「よし、仕留めたな」

ハッチを開け、屑鉄となったATサイクロプスを確認する。

名雪「やったね♪ 祐一」

砲座に座っている名雪が労いの言葉をかけてくれる。
名雪は俺の従妹で、恋人だ。

祐一「名雪も上手くなったな」

数週間前までは、狙いをつけることすら出来なかったのが、
今では高速移動中でも、即座に砲塔を回転させ、正確な射撃を行うことが出来る。
射撃に関してなら、俺より上だ。

名雪「うんっ、頑張ってるもん」

そう言って小さくガッツポーズするが、頼もしいというより可愛らしい。
思わずプっと、吹き出してしまった。

名雪「うーっ、笑うなんて酷いよぉ」

名雪が頬をプクーっと膨らませて怒る。
やはり怖いというより可愛らしい。
俺は名雪の頭にポンっと手を置くと、

祐一「すまんすまん、あまりに言動にギャップがありすぎてな」

名雪「うーっ、祐一極悪人だよ・・・」

頭に置かれた手を払いのけ、プイっと横を向いてしまった。
どうやら拗ねてしまったらしい。
俺は、しょうがないな。と思いつつ、名雪の髪を撫でると、耳元に口を寄せ、
囁くようにボソっと言った。

祐一「でも、可愛かったぞ」

と・・・


                はがね
メタルマックスカノン 〜鋼鉄の絆〜


第1回「モンスターハンター」

旧西暦2XXX年、地球は愚かな人類達による戦争で破壊し尽くされ、
人類の人口は元の約1/3にまで激減してしまった。

そして大災害から200年後の新西暦195年、ようやく復興を遂げ始めた人類だが、
ここにきて、更に追い討ちがかかる。悪の組織、バイアス・グラップラーの人間狩りである。
グラップラーは、若い人間のみを連れて行き、人体実験の材料にするので、残るのは幼い子供と、
老人だけだった。

グラップラーの実験により、異形の生物、モンスターが誕生し、人々の生活を脅かした。
モンスターと一口に言っても、その形態は様々で、動物が巨大化し強暴になったモンスターもいれば、
銃器などの兵器とナノマシンで融合し、体の一部として兵器を使うモンスターもいる。
そんな強力なモンスターの前に、普通の人間など敵うはずもなく、成すすべなく殺されていくばかりだった。

しかし、いつのころからか、そんなモンスター達を片付けることを職業とする者達が現れた。
強力な装備や、戦車を使いモンスターを悉く駆逐する。モンスターハンターである。
だが、強力な武装を持つハンター達でさえ、グラップラー四天王には歯が立たなかった。
四天王に挑んだハンター達は数知れないが、誰一人として戻ってくる者はいなかった。

だが、そんな悪の組織、バイアス・グラップラーにも最後が訪れた。
新西暦291年、戦車を駆ける一人のハンターと仲間達が、グラップラー四天王を打ち破り、

バイアスシティ最下部に存在したバイアス・グラップラー総帥、バイアス・ブラドをも倒したのだ。

これにより、世界に平和が戻り、更に100年程の月日が過ぎた新西暦391年。
モンスターハンター、相沢祐一の物語は、ここから始まる。



ハンターオフィス受付「え〜と、相沢さんは、ATサイクロプスを12体倒していますので、2040Gの配当になります」

街に戻った俺達は、ハンターオフィスでターゲットの賞金を受け取った。
同時にリセットされたメモリーカードも受け取る。
このメモリーカードに、倒した敵のデータが書き込まれるのだ。

祐一「来週のターゲットはなんだ?」

来たついでに来週のターゲットも聞いておく。
ターゲットは毎週変わるので、マメに聞いておく必要がある。
ターゲットが変更されているのに、変更前のターゲットを狩るなんていう、馬鹿げた真似をするほどの
弾薬の余裕は無い。

受付「はい、少々お待ちを・・・・・来週のターゲットは、ガンタワーとなっております」

ガンタワーか・・・ATサイクロプスより遥かに手強いが、その分賞金の額が違う。
倒せないことはないが、遠出をしなくてはいけないので、俺の頭の中で、
遠出をすることでの燃料費・弾薬・装甲タイル・食料などの経費を考慮に入れた上での、
損得勘定が高速で行われる。

祐一「よし、名雪、明日いっぱいATサイクロプスを狩って、明後日には、全員でガンタワーを狩りに行くぞ」

名雪「え? ガンタワーってことは・・・リバーピアまで行くの?!」

横でWANTEDモンスターの張り紙を見ていた名雪が、ガンタワーという単語に反応し、目を輝かせる。

祐一「おいおい、遊びに行くわけじゃないんだぞ」

こいつの目が輝いてる理由はよ〜く知っている。
リバーピアにある喫茶店の百花屋で、大好物のイチゴサンデーを食べたいのだ。

名雪「でもでもっ、久しぶりに百花屋さんでイチゴサンデー食べたいんだよ〜」

祐一「1週間前に食べに行ったばかりじゃないか」

名雪「うーっ、1週間経てば立派に久しぶりだよぉ」

大好物の為か、名雪も必死に食い下がる。
イチゴ関連のことになると、名雪は一歩も譲らないのだ。
俺は、はぁ、っと盛大にため息をつくと

祐一「わかったよ。ただし、しっかりガンタワーを狩れたら、だぞ」

俺も甘いな、と思いつつも、これでやる気を出すならしめたものだ。

名雪「うんっ! 私、頑張るよ!」

たった8Gのイチゴサンデーの為に、ここまでやる気を出す奴も珍しい・・・
そう思いつつも、そんな名雪が好きなのだが・・・

祐一「よし、じゃあ今日はもう帰るぞ」

WANTEDモンスターの張り紙を横目で見つつ、ハンターオフィスを出ようとすると、
1枚の張り紙が目にとまった。

『バイオニック・テッドブロイラー 賞金10,000,000G』

グラップラー四天王のボス。死んだハズだったが、どこかの科学者が誤って生き返らせてしまったという。
俺の両親の仇でもある。
7年前、俺の住んでいた街は、テッドブロイラーが復活させたネオ・バイアス・グラップラーに襲撃された。
目的は、もうなんだかよく憶えていないが、人間狩りではなかったハズだ。
俺の両親は、俺を家の地下室に隠した後、グラップラーと戦い、行方不明になってしまった。

両親は凄腕のハンターだったが、あのテッドブロイラーが相手だ。
生きている可能性はあまりにも低い。
まだ遺体が見つかったわけではないので、希望が無いわけではないが。

ネオ・グラップラーが去った後、俺は親戚の水瀬家に引き取られた。
幸い、秋子さんも名雪も、俺を家族同然に迎えてくれたので、俺はなに不自由なく育つことができた。
だが俺は、ネオ・グラップラーへの復讐を誓い、両親の遺してくれた戦車、旧日本自衛隊が使用していた
90式戦車で駆ける、ハンターになった。

名雪「祐一、どうしたの? 怖い顔してるよ・・・」

名雪が不安げな顔で、俺の顔を覗きこんでいた。
どうもこいつのことを考えると、殺気が隠せないらしい。

祐一「いや、なんでもない。さ、帰るぞ」

咄嗟にいつもの顔に戻し、ハンターオフィスを出る。

名雪「あっ、祐一待ってよ〜」

外に停めておいた90式に乗りこみ、発進させる。
90式に積まれたV48コングが、低く、重く唸り声を上げ、重い戦車のキャタピラを動かす。
真っ白な世界に、灰色の排気ガスが多量に排出される。

名雪「ねえ、祐一。大丈夫だよ。叔母さん達、きっと生きてるよ」

しばらく家に向かって90式を走らせていると、名雪がおずおずと口を開く。
さっき、俺がテッドブロイラーの張り紙を見ていたのを見て、感づいたのだろう・・・

祐一「そうだな・・・俺もそう信じたい」

そう言いながらも、無意識に操縦桿を握る手に、力が入る。
もっと、もっともっと強くなって、俺がネオ・グラップラーを潰す。

名雪(祐一、憎しみだけじゃ、ダメだよ。自分を見失ったら、ダメだよ)

90式戦車が通った後に残るのは、雪にくっきりと付いた、キャタピラの跡だけだった・・・

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

名雪「ただいま〜♪」

名雪が勢い良くドアを開け放ち、帰宅の挨拶をする。

秋子「おかえりなさい。2人共、ご苦労様」

既に家には秋子さんが戻っており、玄関で迎えてくれた。
秋子さんは、俺の両親をも凌ぐ凄腕のハンターだ。
いつも必ず、俺達より先帰っている。それでいて、俺達より稼ぎが上なのだ。

祐一「ただいま。秋子さん、これが今日の分です」

俺は今日の分の稼ぎの中から、一部を秋子さんに渡すことにしている。
だが、秋子さんは・・・

秋子「祐一さん。もういいんですよ。自分の稼ぎは、自分の好きなように使ってください」

ニッコリと微笑んで、金を持った俺の手を、自分で手で包み込み、俺に押し返した。

祐一「で、でも秋子さん!」

俺は引き下がるわけにはいかなかった。
俺が秋子さんに稼いだ金の一部を渡すのは、育ててもらった恩返しであって、
ハンターになって、最初に決めたことだった。

秋子「いいんですよ、恩返しなら、もう十分していただきましたから」

微笑みながらも、逆らうことは許さないといった雰囲気だ。

秋子「祐一さんが、無事に育ってくれただけで、私は十分です。今まで受け取ってきたお金も、銀行に預けてあります。
あのお金も、祐一さんの、自分の為に使ってください。旅に出るには、新しい装備も必要でしょうから」

・・・何もかも見透かされていたようだ。
俺は近々、武者修業も兼ねて、この街をしばらく出るつもりでいた。
むろん名雪は置いて。

名雪「えっ? 祐一、旅に出ちゃうの?」

黙って話しを聞いていた名雪が、口を挟む。

祐一「バレちゃ仕方ないな・・・ああ、俺は近々この街を出て、修行して、もっと強くなる」

バレてしまったものはしょうがない。
俺は潔く、全てを話した。
両親の生死を確かめる為、ネオ・グラップラーへの復讐の為、
俺は早く強くなりたかった。

そのためには、もっと強い敵と戦わなきゃいけない。
だから俺は街を出て、もっと強力なモンスターが出る地域へ行くつもりだった。

名雪「でも、祐一。私も、一緒に連れていってくれるよね?」

祐一「ダメだ。お前を連れて行くわけにはいかない」

俺の為に、名雪まで危険な目に遭わせるわけにはいかない。

名雪「なんで?! 私じゃ祐一の支えになってあげられないの?!」

名雪が必死に食らいついてくるが、こればっかりは折れるわけにはいかない。
今までより、もっと身近に死が迫ってくるのだ。
名雪を俺の復讐に巻き込み、死なせてしまうのは自分が死ぬより耐え難い。

祐一「名雪! わかってくれ! お前を死なせたたくないんだ!」

名雪「嫌だよっ! 私は、私はずっと祐一に付いて行くって決めたんだもん!」

飛びこむように俺に抱き着いてくる名雪。
何時の間にか、名雪は目にいっぱいの涙を浮かべていた。

秋子「不了承」

『えっ?』

俺と名雪、2人の声が重なった。
一瞬、秋子さんが何を言ったのかわからなかった。

秋子「ダメですよ祐一さん。復讐の為だけに、この街を出るつもりなら、私は祐一さんから戦車を取上げます。
姉さん達も、祐一さんのそんな姿は見たくないでしょうから。もちろん、私も見ていたくありません」

顔だけは微笑んでいるが、口調は真剣そのもので、内に秘めた、曲がることのない信念を表している。
それでいて、母の慈愛に満ちているのだから、この人には敵わない。

祐一「わかりました。復讐の為だけに旅に出るのは止めます。でも、俺の両親が生きているのか、
それは確かめたいんです。それに、ネオ・グラップラーを潰すのも、俺のような境遇の人間を、これ以上増やしたくないからなんです」

このまま奴等を野放しにしていたら、俺と同じ境遇の人間が生まれてしまう。
そして恐らく同じ道を進むだろう。
そんな復讐に身を任せた生き方をする人間を、増やしたくない。

秋子「それなら安心です。後は、名雪も連れていっていただけるのであれば、旅に出るのを了承します」

秋子さんの言葉に耳を疑った。
名雪を連れて行けだって?

祐一「ちょ、ちょっと待ってくださいよ秋子さん! 危険な旅に、名雪を連れて行けるわけないじゃないですか!」

死ぬかもしれない危険な旅に、娘を送り出すというのかこの人は・・・

秋子「名雪が一緒だと、危険なことは出来ないでしょう?」

秋子さんの言葉に、俺は絶句した。
そうか・・・俺はまだ心のどこかで、憎しみで満ちた復讐心を振りきれずにいたのか。
それを秋子さんは見抜いていたようだ。

祐一「わかりました。名雪も連れて行きます」

俺のその言葉を聞いた秋子さんは、ニッコリ微笑んで

秋子「了承。それでこそ祐一さんです。さっ、夕食にしましょう」

俺達は、今までずっと玄関で話してたことに気付き、慌てて家に上がる。
食卓に向かう秋子さんの後ろについて、俺と名雪も食卓へ向かう。

名雪「祐一、ふぁいと、だよ♪」

秋子さん譲りの笑顔で、俺を励ましてくれる名雪。
俺は、ずっと名雪を、この笑顔を守っていくことを決心した。

続く・・・



後書き

ふい〜・・・突発型無謀新連載第2弾です。
名雪「これって、メタルマックスなんだよね?」
ん、まあ一応な。
Kanonとメタルマックスのクロス、誰もやったこと無いと思います。
名雪「それ以前に、メタルマックスを知ってる人の方が少ないんじゃない?」
うぐ・・・確かに・・・
93年発売のSFCソフトな上に、データイーストから出たマイナーなソフトだもんなぁ・・・
自分では隠れた名作だと思うけど・・・
名雪「歴史に埋もれちゃってるんだね・・・」
そうなんだよなぁ・・・
いいゲームなのに・・・
名雪「そういえば、これで連載3本目だよね? そんなに連載物増やして、ちゃんと更新できるの?」
あ、それについては大丈夫。
この連載は、のんびりやるから。
名雪「っていうことは、当面のメインは、でびるさまなーの方なんだ」
まあそうなるね。
両方書くほど暇ないし。
要望があれば、こっちを優先で書いてもいいけどね。
ま、とりあえずまた次回です。
名雪「それじゃまたね〜♪」


戦車解説

『90式戦車』
日本の自衛隊が使用するハイテク技術の粋を集め作られた戦車。
1両9億円とかなり高価な為、生産数は平成13年までで、224両にすぎない。
だが性能は文句無しに一流である。
本来は3人乗りだが、この世界ではCユニットの性能により、1人でも操縦可能である。

データ(現実)

全長:    9.755m
全幅:    3.43m
全高:    2.335m
全備重量: 50.0t
乗員:    3名
エンジン:  三菱10ZG32WT 2ストロークV型10気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,500hp/2,400rpm
最高速度: 70km/h
航続距離: 340km
武装:    44口径120mm滑腔砲Rh120×1 (32発)
        12.7mm重機関銃M2×1
        74式車載7.62mm機関銃×1
装甲:    複合装甲

因みに、このSS内でのシャシー重量は、13tである。
現在の武装は以下の通り、

データ(SS内)

全備重量: 56.0t
乗員:    最高2名
シャシー:   90式戦車(重量:13.00t)
エンジン:   V48コング(重量:1.00t)
主砲:    135mmキャノン(重量:3.78t)
副砲:    バーナードラゴン(重量:3.38t)
特殊:    マニアックシェフ(重量:6.00t)
Cユニット:  アクセルノイマン(重量:0.65t)
装甲タイル: 2819枚(重量:1枚0.01t)