「見える! わたしにも敵が見えるわっ!」




































「当たらなければどうという事はないわっ!」




































「遅いっ!!」




































「そこだっ!・・・って、あっ!」


ノリノリで某赤い人をやっていたユイナの顔が急に引き攣る。


「ご、ごめぇんシンジ。倒しちゃった。あはは・・・」

「ごめんじゃないよユイナ姉さーーんっ!!」


フォスファル旗艦メタトロンの内部に、乾いた笑い声と絶叫が響き渡る。











新世紀エヴァンゲリオン
〜終りの始まり


CHAPTER.3

猫に小判、豚に真珠












「だから悪かったってば。そんなに怒らないでよ〜」

「せっかく僕の初陣だったのに・・・姉さんが、姉さんが・・・」


メタトロン発令所内では、戻ってきたユイナが初陣の出番を奪われた少年、神乃シンジを必死になだめていた。


「まさかあんなに弱いとは思わなかったのよ〜」

「ボク弱くないもんっ!!」

「う・・・サキ・・・」


ユイナの言い訳に今度はサキが爆発した。

目尻に涙をためたその表情にユイナはしまった、と思ったがもう遅い。


「ボク弱くないもん! わーーんっ!!」


サキは大きな瞳から涙を滝のように流し、発令所内から走り去ってしまった。


「ハーリー泣き?」


リルが小さくそう呟くが、聞こえていた者はいなかった。


「う〜ん・・・カヲル。お願い」


ユイナが手を合わせてゴメンっと付け足すと、カヲルは苦笑いしながらサキの後を追って行った。


「次はちゃんとシンジにやらせてあげるから、ねっ? 機嫌直して〜」

「・・・わかったよユイナ姉さん。でも、次は絶対僕にやらせてもらうからね」

「わかってるって。さっ、これからその為の準備があるんだから、先に行って待ってて」


ユイナの説得にシブシブといった様子で納得すると、シンジは発令所を後にした。

その後に続いて他のメンバー達も持ち場に戻っていく。


「しかし・・・よろしかったのですか?」

「ん、大丈夫よ。シンジにはちょっと悪い事しちゃったけどね」


ユイナの側が定位置の役職、特務機関フォスファル副指令熾舞シエルが"予定"を変更した事について問いかける。


「反作用の方は問題ないみたいね。とりあえず、後は予定通りに進めるわ」

「はい、かしこまりました」

「それじゃあ、ちょっとヤボ用を済ませてから行くわ・・・NERVに」


レイと、ついでに初号機と零号機をもらいにね。と付け加えるとユイナも発令所から姿を消した。



































フォスファル旗艦メタトロンから飛び出したエヴァとも使徒とも違う白銀の巨人。

それは驚異的な機動性でサキエルの後方に回ると手にしていたライフルのようなものを数回発射。

発射された弾丸はA.T.フィールドを軽々と突き破り、サキエルの体をも貫通。

サキエルも必死に光の十字架を放ち巨人を狙うが、全ての十字架は巨人に命中する事はなく・・・

サキエルは巨人が手に持った光の剣によって両断され、完全に沈黙。



以上が、NERV会議室で流された第3使徒サキエルと、白銀の巨人の戦闘記録だった。


「驚異的な威力のライフルね。このサイズで使徒のA.T.フィールドと装甲を容易く貫通するなんて」


現在開発中の陽電子砲、ポジトロンライフルよりも小型でしかも威力は桁違いときている。

リツコはMAGIに解析を急がせつつ、憎々しげに言葉を吐く。


「でもリツコ。貴女はこの兵器の事を"知って"いるんでしょう?」

「ええ・・・認めたくも無いし、馬鹿馬鹿しい事この上ないんだけど・・・知っているわ・・・」


ミサトの"知って "という単語にピクリと眉が反応するが、冷静に返答する。


「では、アレは何? エヴァでもないのに軽々と使徒を殲滅してのけたあの兵器はなんなの!?」

「ミサト・・・ガンダムって、知ってるかしら?」

「ガンダム?」


知っているという返答に対し、ミサトは瞬時にヒートアップし更なる質問を投げかけるが、

返ってきた言葉はミサトがまったく予期していなかった言葉だった。


「ガンダムというのは、旧世紀に大ヒットし、ロボットマニアの間は不朽の名作と呼ばれているアニメ作品の事よ」


頭のてっぺんにデカデカと? を浮かべるミサトに、心底馬鹿らしいと思いつつ律儀に説明するリツコ。


「名前くらい聞いた事あるわよ。で、それがあの兵器と何の関係があるっていうの?」

「・・・・・・あの兵器は、形状で判断するとそのガンダムに登場するMS(モビルスーツ)というロボットなのよ・・・

 正確に言えば、小説版逆襲のシャアという作品に登場する、ナイチンゲールという機体ね。カラーリングは違うけれど」

「は?」


目の前の科学者の言った事が理解できず、思考停止に陥るミサト。

言い切った科学者、リツコは溜息をつきつつ、頭痛のする頭を手で押さえる。


「な、なによそれ!? ふざけるのも大概にしなさいよリツコ! 架空のロボットが実在するはずないでしょう!」

「私だってあんなものが実在するなんて考えたくないわよ! でも! 他に考えられないのよ!」


殆ど半狂乱になってミサトに言い放ち、無言でマヤに指示を出す。

マヤが素早いキータッチでコンソール上部のモニターに何かを表示する。


「98%・・・これがなに?」

「それはさっきの兵器と、私の持ってるプラモデルとの一致率よ。因みに私のプラモデルはこれ」


白衣のポケットに手を突っ込むと、どう見ても入らないであろう大きさのプラモデルを取り出した。

ミサトは(四次元ポケット?)とツッコミたい衝動にかられたが、今はあの兵器の事の方が重要と思い、

取り出されたプラモデルを凝視する。


「確かにそっくりね・・・こっちが本物なの?」

「ええ、この私が夜も寝ないで昼寝して作った力作ですからね。作品内と寸分たがわぬはずよ」

「赤木博士・・・減俸3ヶ月」


自らが作った力作を胸を張って自慢すると、発令所の最上段からサボリにたいする断罪の刃が突き立てられた。

リツコは自分の失言に気づき、よよよと泣き崩れ、ミサトはとばっちりは御免だとばかりに顔を背け口笛を吹き、他人の振り。


「で、この兵器はどんな性能なの?」


髭グラサングリズリー・・・もといゲンドウが発令所を後にした事を確認し、未だ泣き崩れたままのリツコに問いかける。


ああ、そんな冷たいところがス・テ・キ・・・ゲンドウさ・・・いえ、ご主人様〜・・・


ズザザッ!


リツコのただならぬ気配を察し、素早く3mほど距離を取るミサト。

先程まで、ただ泣き崩れていただけかと思っていたが、リツコの顔は朱に染まり、

頬は明らかに上気している。そして口からは聞いてはいけない事をブツブツと呟いている気がする


「・・・しっかりしなさいリツコーっ!」


スッパーン!


意を決し、どこからか取り出したスリッパでリツコの頭をはたく。


「あら・・・私、どうしたのかしら・・・」

「戻ってきたわね。とりあえず、あの兵器の性能の説明お願いね」


正気に戻ったリツコに対し、溜息を吐きつつ、同じ質問を繰り返す。


「ああ、そんなのわからないわよ」


ブチ

後にミサトの補佐役、作戦部の日向マコトはこんな音が聞こえたと語っている。



ふざけんなぁぁぁぁぁぁっ!!!


天をも劈くミサトの咆哮が発令所はおろかNERV本部全体を揺らした。

それどころかミサトの咆哮は超音波も発し、そこら中のガラスが砕け、モニターは吹き飛び、

発令所の下層にあったMAGIにはヒビが入ってた。

このミサトの咆哮により、発令所勤務の職員8割が病院送りになり、

ミサトに減俸半年が言い渡される事となる。

尚その際、「え、エビチューーーーッ!!!」と叫び、今度は指令と副指令を病院送りしてしまう。

その事でまた減俸処分を下され、しばらくエビチュを飲めなくなるのだが、どうでもいい事なので割愛する。

尚、病院送りになってしまった職員達は病院に搬送される際、こう言い残している。

「ジャイアン現る・・・」





「いいことミサト。あれは元は架空の兵器なのよ? あれを知っているからといって、性能が判るということじゃないわ」


ミサトの咆哮を予期し、耳をふさいでいたリツコが淡々と説明を始める。


「それに、外見が同じだからといって、中身まで同じとは限らないわ」

「仮に、同じだとすると?」

「そうね・・・動力は小型核融合炉、あのライフルはメガ粒子という粒子を用いた大型メガビームライフル。

 光の剣はライフルと同じメガ粒子を用いたビームサーベルね。本来は隠し腕のはずなんだけど・・・

 あと・・・これは使えるかわからないけど、ファンネルという脳波制御の無線誘導移動砲座があるはずよ。

 動かすのに特殊な能力、いわゆるニュータイプ呼ばれている能力が必要だけど。

 細かい武装はまだあるけど、おおまかにはこんなところね」

「そ、そう・・・」


一息で一気にまくし立てられたミサトは少々引きぎみだ。

一方のリツコは自分の好きな物の説明をできて満足げな様子だった。
























「サキエルを殲滅、実力も前回の通りね」

「反作用は上手く抑えられたか・・・」

「今の所・・・はね」


闇に包まれた空間に、2本の光の柱あった。

その中心には少年と少女、神乃シンと神乃ユイナが立っていた。


「これから、レイを迎えに、ついでに初号機と零号機を取りに行くわ」

「零号機とレイはともかく、初号機か・・・無くても別に構わないんだがなぁ・・・」

「まあね。シンジもゴッドの方を気に入ってるしね〜。まったく、なんでああなったのかしら」

「さ、さあな・・・」


ユイナが軽蔑の白い眼差しでシンを睨むとシンは冷や汗をかいて後ずさる。

どうやら原因はシンにあるようだ。


「へぇ〜・・・そういう事言うんだ」

「う・・・」


ユイナの睨みが一層強くなる。

シンはズリズリと後ずさり、既に身体の半分が光の柱からはみ出ていた。


「まあ、それはいいわ。それで、あの女はもう殺っちゃうの?」

「好きにしていいさ。どうせいつでも殺れる」


軽蔑の眼差しから一転、周囲の空間が歪み始める。

二人の凄まじい殺気が干渉し合い、憎悪の闇が空間を歪めているようだ。


「とりあえず、行ってくるわね」

「ああ、頼む」


周囲に闇を放ちながらこの空間から立ち去ろうとするユイナ。


「あ〜、そういえば、前から思ってたんだけど・・・」

「ん? なにを?」


立ち去る直前、何かを思い出したかのようにユイナが振り返る。


「なんでこんな暗いとこで会議しなきゃなんないのよ」

「・・・お約束だから・・・だ」


シンがそう答えた途端、今度は周囲を闇ではなく沈黙が満たす。


「・・・」

「・・・・・・ツッコんでくれよ・・・」


何も言わずに立ち去るユイナに、寂しくポツリと呟くシン。

目尻には涙も溜まっており、全身から哀愁を漂わせていた。

























「不味い事になったな、六分儀」

「左様、もはや周知の事実となった使徒。それをフォスファルなどに奪われるとは」

「まったく! 金だけ使っておいて勝てぬとは!」

「初陣で壊した弐号機と零号機の修理費、国が一つ二つ傾くよ」


暗闇で満たされた室内に、数名の人影が浮かんでいる。

赤、青、緑等の原色のテーブルに着いている老人達が、

口々に白いテーブルに着いているゲンドウに不満をぶつける。


「我々がどれほどの時と金を失ってきたのか、検討もつかない」

「その上結果も出せず、手柄をフォスファルにくれてやるとは、呆れて物も言えない」

「戦力不足は明らかです。初号機パイロットの強制徴兵要請を」


黙って不満を聞いていたゲンドウがゆっくり口を開く。

そして出てきた言葉は老人達を呆気に取らせる。


「馬鹿を言うな! 初号機パイロット候補はフォスファルの専属パイロットだ。

 強制徴兵などできん!」

「左様。君は国連での我々の立場を知らぬわけではあるまい?」

「今回の事で我々の立場は更に悪くなる。予算だけ奪い、結果を出せぬ特務機関などいらぬとな!」


呆気に取られた老人達だったが、ゲンドウの言った事を理解すると

怒りを露にして一斉に罵声を浴びせる。


「その結果、我々は初号機と零号機及び零号機パイロットを失う事になった」

「!?」


唯一ゲンドウに対し罵声を浴びせなかったバイザーをかけた老人、

キール・ローレンツが苦々しく言い放つ。

その言葉にゲンドウは普段はまったく崩さぬ鉄面皮を崩し、感情を露にして立ち上がった。


「フォスファルから初号機と零号機を買い取りたいとの要請があった。我々はそれを受けるしかない」

「しかし! 初号機と零号機を失えば戦力不足に拍車がかかります」

「無論、代わりにこちらで建造中の伍号機と六号機を本部に送る。

 それで戦力に問題はあるまい?」

「し、しかし!」


焦り、必死に食い下がるゲンドウを老人達は面白い物が見れたと満足げだ。

だが当のゲンドウは歯を食い縛り、憎しみの篭った目でキールを睨み付けている。


「六分儀、これは委員会の決定なのだよ。逆らう事は許されない」

「役に立たない初号機と大破した零号機を売却するだけで、

 この2機の建造額の数倍の予算が手に入るのだよ」

「左様、実に量産機8機分の予算。受ける理由はあっても拒否する理由はないよ」

「これから本部にフォスファル総司令が向かう、丁重にもてなすのだな」

「では、本日の会議はこれで終わりだ。六分儀、これ以上の失態は許さん」

「左様、このままでは補完計画どころではないからね」


言いたい事を言い、もう用はないといわんばかりに消えていく老人達。

どうやらホログラフであったようだ。

老人達が去った後には、憎々しげに拳を握り締めたゲンドウがその場に立ち尽くすだけだった・・・

















「老人達はなんと?」

「初号機と零号機、更にはレイをフォスファルに売却するそうだ」

「なに!?」


ゲンドウが苦渋に満ちた表情でそう言い放ち、

電柱ことネルフ副指令、冬月コウゾウは驚愕し、その台詞に我耳を疑った。


「お前、それを飲んだと言うのか!?」

「・・・仕方あるまい。今ゼーレに歯向かうのは避けたい」

「くっ・・・だが、戦力面はどうする?」

「ドイツで建造中の伍号機と六号機をこちらに回すそうだ」


冬月の抵抗も無駄でしかなく、ダメ押しの追い撃ちがあるだけであった。


「だが、レイはなんとしても奴等には渡さん」


ゲンドウがお得意の手を口元で組む、通称ゲンドウポーズをしながらポツリと呟く。


「!? 正気か!? 馬鹿な事はやめろ! 今自分で仕方ないと言ったばかりだろうが!」

「ターミナルドグマに移せばいい。そうすれば奴等には手出しできまい」

「自分が言っている事が分っているのか!? そんな事をしたら老人達が黙っていないぞ!

 ただでさえ今回の事で国連での我々の旗色は悪いんだ。この上更にそんな事をしたら立場が無くなるぞ!

 レイはお前の言う事は聞く! 実験になら呼び出せばいい! その上奴等の動向も探れる。

 一石二鳥だ。それでいいだろう!」

「・・・ああ。分った」


正気とは思えない言動に冬月は青褪め、それを止めるべく一気にまくし立てた。

それが好をそうしたのか、ゲンドウはゆっくりと肯き、冬月はホッと胸を撫で下ろす。


プルルルルルー プルルルルルー


胸を撫で下ろしたのもつかの間、机の上にある電話が鳴り響き、冬月はビクッと半歩後退する。


「・・・私だ・・・なに!? そうか、分った。通せ」


憮然とした表情で電話を取ったゲンドウであったが、電話の内容に瞬間驚愕するが、

直ぐに落ち着きを取り戻し、指示を伝えて電話を切った。


「誰が来たんだ?」

「・・・・・・フォスファル総司令の女と、初号機の予備だ」

「もう来たのか・・・六分儀、くれぐれも変な気は起こすなよ」

「分っている」


指示の内容から誰が来たか悟った冬月だったが、確認の為訊いてみると、

やはり予想通りの答えが返り、何もせぬよう念を押した。



続く・・・


 



後書き

大変長らくお待たせいたしますた! おわはじ3話だす!

名雪「なにその喋り方は?」

気にするでねぇ!

名雪「はいはい。もういいよ」

くう・・・ツッコミを! ツッコミをプリーズ!

名雪「ヤだよ」

はうあ・・・なゆちゃん冷たいのぉ・・・

名雪「うあ・・・筆者になゆちゃんって呼ばれると鳥肌が・・・」

ひでぇ・・・わっちの心は酷く傷ついたぞ。

名雪「永久に消えない傷を作ってあげようか?」

いえ! 結構です!

名雪「ちっ・・・」

(ちっ、とか言ったよちっ、って!)

と、とにかく! 次回4話でまたお会いしましょう!

名雪「またね〜」