「皆、準備はいい?」

『はい!』


カヲル達と再会してから3ヶ月程が経った。

何故3ヶ月要したのか、答えは簡単。

カヲルの形は主物質界(プライム・マテリアル・プレーン)

で実体化(マテリアライズ)した時既にリリンの形であったが、

他の使徒達は違った形をしていた為、リリンの身体に慣れるのに時間がかかったのである。


各使徒達の能力は以下の通りである。

サキは光のパイルを利用した槍術と十字架状の光線。

シエルは腕を光のムチに変化させ自在に操る。ムチの速度は音速を遥かに超える。

ラミは高出力の加粒子砲を身体の至る所からでも発射が可能。更に超音波を操る事が出来る。

エルは身体の一部を変化させ、硬質の刃物に変えることが出来る。水を操る事も可能。

フェールとルフェルは威力はラミより少し劣るものの、加粒子砲が使え、

爪を伸縮、硬貨させ鋭利な刃物にすることが出来る。

フォンは身体のどこからでも2万度以上の炎を発生させることが出来る。

リエはどんな液体でも強力な溶解液に変化させることが出来る上、地を操る力を持つ。

イルは重力を操る事が可能な上、触れた物を爆発物に変える事が出来る。

ウルは無条件で機械を支配下に置く事が可能。そして全ての機械と名のつく物を自在に操る事が可能。

リルはディラックの海と空間を操る事が可能。

ルディは生物に身体の一部を植え付け、操る事が可能。

ゼルはどんな布切れでも鋭利な刃物に変化させる事が可能な上、サキの数十倍の威力の光線が使える。

アルは人間の精神を操れる上、幻術を使う事も出来る。

ミサは原子や分子を自在に操る事が可能。水の原子、

分子配列を変換、追加する事によって鉄に変える事などが可能。

カヲルはあらゆる結界と機械を無効化する事が可能。


その他共通の能力は、強力なA・Tフィールド、

コアを破壊されない限り有効な復元能力、あらゆる毒素の耐性、無呼吸活動。

暗闇を見通す目(赤外線を目視可能)、身体能力は通常の人間の数十倍から数百倍。

仲間同士でのテレパシーのようなものも使える。




新世紀エヴァンゲリオン
〜終りの始まり


CHAPTER.1

過去へ・・・取り戻す為に・・・




「シンジ君。僕達の能力は皆把握しているけど、君の能力はどんなものなんだい?」


カヲルのその台詞に一同がうんうんと興味津々な様子で頷く。


「そういえば僕の能力はまだ言ってなかったね。僕の能力は魔法と空間。

 空間はリルと同じで空間を自由に操る事が出来る。魔法は、

 僕が漫画やアニメ、TVゲームで知ってる限りの魔法と呼ばれているものが使える。

 後、色んな物を創造できる能力も残してある。

 後の破壊系の能力は封印してあるよ。扱いきれる力じゃないからね」


シンジが魔法、と言った途端、皆は訳が解らないといった様子で首を傾げた。


「う〜む・・・魔法・・・・・・具体的にはどんなものなんだ?

 俺はそういうのまったく知らんのだが・・・」


ゼルが図らずも皆の考えを代弁する。


「そうだね。例えば・・・こんな事が出来るよ。ファイア!」


シンジが手を翳し、呪文を唱えると、砂浜に埋もれていた瓦礫の一部に炎が走った。

それを見た一同から驚きの声が上がる。


「今のは比較的弱い部類の魔法だけど、もっと強力なのもあるから便利かな。

 身体を回復させたり、死者を蘇生させる魔法もあるよ」


マジックポイントとかなんてのは必要無いけどね。と付け加える。


「それじゃ僕の能力の説明も終ったし、新しい仲間を紹介するよ」


シンジは新しい仲間と聞いて驚いている皆の顔を、悪戯が成功した子供の様な表情で見ながら、

腕を天に掲げた。

するとシンジ達の上空に、漫画やアニメに出てくる様な巨大な宇宙船の様なものが表れた。


「これが僕達の拠点兼仲間の機動戦艦メタトロンだよ。全長は1200mくらいかな・・・

 さ、メタトロン。皆に自己紹介を頼むよ」

シンジがそう言うと、メタトロンの艦首にある丸いライトの様な部分が点滅する。


「了解ですマスター。皆さんはじめまして、わたしはメタトロンと申します。

 まだマスターに創ってもらったばかりですが、宜しくお願いしますね」


メタトロンが自己紹介を終えると、シンジ以外が驚愕の表情で上空に浮かぶメタトロンを凝視していた。


「皆、どうかしたの?」


シンジが首を傾げながら問いかけると、カヲルがギギギっと、

錆びたロボットが首を回す様な音が出そうなくらい

のぎこちなさで、震えながらシンジに顔を向ける。


「し、しししシンジ君? 彼、い、いや彼女、いやメタトロン様って、あのメタトロン様の事かい?」


呂律が回らない舌でやっとこさシンジに言いたい事を伝えると、

シンジはプっと吹き出して笑い始めた。


「あっはっはっはっはっはっ。違うよカヲルさん。メタトロンっていうのは名前だけで、

 君達が知ってる7大天使のメタトロンじゃないよ。彼女は船の制御システムの様なものだよ」


シンジが笑いながら言うと、皆は心底ホッとした様に胸を撫で下ろした。


「シンちゃん酷いよ〜。メタトロンって言うから、

 あのメタトロン様かと思っちゃったじゃないか〜。ビックリしたんだからね〜」


む〜っとむくれながらシンジに抗議するサキ。

よく見ると他の皆もシンジを抗議の視線で睨んでいた。


「ははは、ごめんごめん。驚かせて悪かったよ。お詫びに後で皆にとっておきの料理をご馳走するよ」


シンジが悪ぶった様子も無く微笑みながらそう言って、最後にウインクを決めると・・・

皆の顔が湯気でも立ち上りそうな程に真っ赤になってしまった。

そこかしこから、「反則だよ〜」とか「天然かしら・・・」等など様々な声が飛び交う。

勿論シンジに聞こえないように小声ではあるが。


「まあ、とりあえずメタトロンの中に入ろう。メタトロン、転送お願いね」


シンジがそう指示し、メタトロンが了解ですマスター。と言った瞬間、

周りの景色が歪み、気付いた時には機械に囲まれた部屋に飛んでいた。

「まず説明しておくね。メタトロンの中に入りたい場合は、心で思ってくれるだけでいい。

 直接メタトロンに言ってもいいけどね。

 メタトロンの内部を移動する時もメタトロンに行きたい場所を伝えるといいよ。

 メタトロンは広いからね。メタトロンの外に出たい時も手順は同じ。

 行きたい場所を伝えれば世界中のどこにでも転送してくれる。

 セキュリティーも万全。皆の魂のパターンを憶えさせてあるから、他の者は絶対に入って来れない」


シンジがとつとつと説明を続ける。

皆は真剣な面持ちでシンジの説明に聞き入っている。


「メタトロンはこれから直ぐに時空跳躍を行って過去に飛ぶ。

 その前に最終確認をしておきたい。皆は僕に付いて来てくれるかい?

 過去へ行ったら数多くの人間を殺す事になる。それに僕の計画は復讐の計画でもある。

 嫌だったら正直に言ってくれて良い。僕は皆に嫌な思いはさせたくないから」


後半は声のトーンを落としながらもハッキリと言う。

それはシンジの決意の表れ。

だが皆の答えは訊くまでも無く、最初から決まっているようなものだった。


「何度も言わせないでよシンジ君。僕達は皆、シンジ君に付いて行くって決めたんだよ」


カヲルの言葉に他の皆も力強く頷いて肯定する。


「ありがとう、皆」


深々と頭を下げ、感謝の気持ちを表すシンジ。


「じゃあ行こう。過去へ・・・メタトロン! 西暦1995年に時空跳躍!

 転移場所、マリアナ海溝チャレンジャー海淵深度10500。カウント20」

「了解ですマスター。カウント20秒後に西暦1995年、

 マリアナ海溝チャレンジャー海淵深度10500に時空跳躍を行います」


シンジが声を張り上げて指示を出すと、メタトロンがそれを復唱し、

メタトロンのエンジンの躍動音が高まり、時空跳躍のエネルギーチャージを始める。


「シンジ君。一つ質問があるんだけどいいかな?」


20・19・18、とカウントダウンが続く中、カヲルがシンジに質問を投げかける。

「なにかな? カヲルさん」

「なんで深海の底なのかな? この船なら宇宙に出た方がいいと思うのだけど・・・」

「ああ、それはね・・・って、もう飛ぶから飛んだ後に説明するよ」


シンジの言う通り、カウントは既に残り5秒を切っていた。


「4・3・2・1・時空跳躍スタート」


メタトロンがカウントダウンが終ると同時に、船体が閃光を放ち、姿が揺らぎ始めた。

そして閃光が一層強くなった瞬間、メタトロンは元の場所から忽然と姿を消した。

その跳躍の瞬間、リルが


「ジャンプ・・・」


と小さく呟いたが、聞こえていた者は居なかった。





















「時空跳躍完了。現在位置西暦1995年、マリアナ海溝チャレンジャー海淵深度10500」


何も変わったように思えないメタトロン船内に、メタトロンの時空跳躍成功の報が告げられる。

シンジ以外の一同は、何が起こったのかよく理解出来ず、仕切りに辺りをキョロキョロと見ている。


「着いたみたいだね。僕は少し外に出てみようと思うけど、皆はどうする?」

「外って、この深海に出るのかい? まあシンジ君の事だから、

 深海の超水圧なんて心配する必要無いんだろうけど」

「ちょっと考えたい事があってね・・・深海の底なら、落ちついて考えられるんじゃないかと思ったんだよ」

「ああ、そういうことだったんだね。それじゃあ、僕達は待つ事にするよ。皆もそれでいいよね?」


うんうんと納得したように頷いた後、カヲルはシンジの邪魔をしないようにと、皆にそう促した。

ルディやルフェル、フェールが少しを頬を膨らませていたが、シンジの邪魔はしたくないと思ったのか、

直ぐに頷いていた。


「ありがとう。あ、皆にはそれぞれ部屋を用意してあるから、僕が戻るまで待機してて欲しい。

 場所はメタトロンに言ってあるから、メタトロンに飛ばしてもらって。それじゃ」


シンジはそう言うと、瞬時にその場から消えた。






























「これから、忙しくなるな・・・」


メタトロンから少し離れた海中にシンジは居た。

目の前には無音の深淵の闇が広がり、シンジはゆっくりとした深海の海流に身を任せる。


「SEELE、NERV・・・ゲンドウ・・・僕はお前達を許さない。僕が見てきたのは、地獄だったよ・・・

 その地獄・・・今度はお前達に味あわせてやるよ・・・」


生命の源の海。その底の底、深層海流が流れるより更に深い海の底。

その海流に身を任せ、たゆたいながらも目には復讐の炎を燃やすシンジ。

散々身勝手な大人達に弄ばれ、崩壊しかかった精神で辿り着いた先は・・・地獄だった。

自分以外が存在しない世界。家族も、友人も、大切な人も存在しない世界。

それはまさに地獄でしかなかった。これを地獄と呼ばずになんと呼べばいいのだろうか。


「そして・・・マナ・・・・・・今度こそ、助けてみせるよ。

 今度こそ、君を薄汚い大人達から守ってみせる」


復讐の闇の炎をその瞳に宿しながらも、愛する者を守り抜く決意を宿した瞳は、不思議な光を放っていた。

シンジはそれから1時間ほど深淵の海にたゆたい、メタトロンに戻った。
























この日から、シンジの長い戦いが始まった。

























続く・・・


 



後書き

はい。お待たせしました。終りの始まりCHAPTER1です。
いやぁ、こんなに時間かけるつもりじゃなかったんだけどなぁ・・・(汗

名雪「相変わらずダメダメだね筆者は・・・」

うぐ・・・

名雪「EVASSにハマったと思ったら、今度はナデシコSS? 懲りないねぇ」

ソレヲイワナイデ・・・

名雪「だって事実じゃん。しかもこのSSに絡めてナデシコSS書こうって計画してるみたいだし・・・」

ど、どこでそんな情報を仕入れたのかな?(汗々

名雪「私の情報網を甘くみてもらっちゃ困るよ。でも、そのシナリオって・・・某有名SSとソックリだよね?(ギロリ」

・・・・・・・・・(滝汗
し、仕方ないでしょ!? 圧倒的優位の立場で話しを進めるにはそれしか無いんだから!
その為の伏線は用意してあるしさ!

名雪「それはたまたまでしょ?」

ぐふ・・・
と、とりあえず、また次回、お会いしましょう〜!

名雪「逃げ足だけは速いねぇ・・・」